あんさんの告白1
ほんのちょっとの勘違いから…(Part1)はじまり…
はじまりは、ほんのちょっとの勘違いからだった…
「家庭を壊さない程度の付き合い」その言葉の意味を、お互いが取り違えた。職場の忘年会で二次会のカラオケが終わり、そろそろお開きか?そんな空気が流れていた。
飲み散らかしたグラスを集めたり、本を揃えたりと、カラオケルームの片付けをしていた私は、いつの間にか置いてきぼりをくっていた。
気が付くと、コートを着かけている彼と二人きり…。ちょっぴりどぎまぎして、そそくさとその場を去ろうとした。リモコンを手に持ち、視線を落として、さりげなく彼のわきを通り過ぎる…はずだった。
足元の視界に、前から誰かの足が近づいてきた。そう認識した瞬間、私の唇がすくい上げられるように唇で持ち上げられた。彼の唇で…。
『!』 体が凍りついたようにこわばる。彼は私の腰に手を回すと、引き寄せて、唇を強く押し当てながら、舌を入れようとしてきた。
久しくディープキスから遠ざかっていた私は、喉の奥が締め付けられるような感覚におそわれて、応じる事が出来なかった。
ゆっくりと唇が離れ、体が解放された。
「びっくりした…」 少しよろめきながら彼から離れ、照れ隠しに前髪をかまいつつ、ほんの一瞬彼を見た。が、彼の表情はよくわからなかった。
ここであたふたしても大人気ないと思い、ゆっくりと歩いて靴をはくと、彼が足早にやってきてドアを背にして私の前に立った。
「行かせない」そう言うと再び抱き寄せて、キスをしてきた。そして舌を入れようとするが、またもや応じられない…。
彼は諦めたのか、唇を強く吸いながら、長いキスをした。
「お前のせいだぞ。」 彼はきょとんとする私を尻目に部屋を出ていった。私が一体何をしたというの…?
以前から、飲み会のたびに彼は「ねぇ、やらせてよ」と、色んな人に声をかけているのかわからないが、よくちょっかいをかけてきた。
別に悪い気はしなかった。なぜなら、もともと私は彼に好意を持っていたから。
昔付き合っていた人と声がそっくりで、ずっと気になっていたのだ。
そんな私の気持ちに気付いていたのか、彼と二人きりで残業をすることになったある日、初めてしらふの状態で彼が言った。
「遊びでなら付き合ってもいいよ。家庭を壊さない程度にね。」
私は、てっきり「お茶をしたり夕飯を食べたりする程度の付き合い」だと、勝手に解釈した。まだまだ、男性に対する認識が甘かったようだ。
そして軽い気持ちで返事をした。「そうね。楽しいかもね。」と。
ちょっとした浮かれ気分から出たこの一言が、彼の何かに火をつけてしまったのだ。
そう…彼は案の定取り違えた。私が「体の関係が優先される付き合い」に合意したと…。